水虫(みずむし)と爪白癬(つめはくせん)

「白癬(はくせん)」は皮膚糸状菌という真菌(いわゆるカビ)によって生じる感染症です。

そして、この皮膚糸状菌(以降は便宜的に白癬菌と呼びます )が爪の部分に感染した状態を「爪白癬」といいます。

ちなみに「水虫(みずむし)」という呼び方は足にできた白癬の俗称で、田圃で仕事をしている農民が自分の足に小水疱ができてムズムズして非常に痒いのを田圃の水の中にいる虫に刺されたと思い込んだことに由来します。

他に股部白癬は「インキンタムシ」、頭部白癬は「シラクモ」、体部白癬は「ゼニタムシ」と呼ばれることがあり、その由来も・・なんとなく音の響きで想像できますよね~(*^。^*)

白癬菌はケラチンというタンパクを栄養源とするので、ケラチンが多く存在する皮膚の表面の角層に住み着きます。爪は角層が変化したものだから白癬菌が住み着き「爪白癬」になってしまうんです。

水虫を長く放置しておくと、いつの間にか爪白癬になっていることは珍しくありません。

水虫は見た目の症状から

①小さな水ぶくれができて皮がむける『小水疱型』

②足の指の間が白くふやけたり皮がむける『趾間型』

③かかとまたは足裏全体がヒビ・あかぎれのようになって皮膚が厚くて硬くなる『角質増殖型』または『角化型』

の3つのタイプに分けられます。

①②は暖かくなると症状がでて涼しくなると自然と症状が治まってきますが、③は年間を通して変わらず、むしろ冬期にはひび割れて痛くなることもあります。

例えば酢を使った民間治療で治った!なんて方は、たまたま涼しい季節になり白癬菌の活動が低下したことを勘違いしていることが多いようです(ごく初期や軽度の水虫は本当に治ることもあるようですよ(^_-)-☆)

水虫は感染症なので、当然うつるんです!!

ただ接触した瞬間にうつるとか、絶対に治らないとかはありません!

正しく対処していればうつりにくいし、しっかり治療をすれば必ず治ります^^

「水虫=かゆい」というイメージがありますが、実際に痒みがあるのは1-2割程度で、しかも夏期以外は痒くない場合が多いので、自分が水虫になっていることに気づかないで治療せず、そのまま感染源になっている方がたくさん・・・・

そして爪白癬は痒くなることがありません。

爪白癬の症状で一番多いのは、爪が白~黄色に濁って厚くなることです。そしてさらには爪の下(中?)がボロボロになって粉をふいたようになるのも特徴です。

通常は爪の先から変化が始まり、徐々に根元のほうに広がっていきます。

時には爪の先から縦に黄白色の筋ができることもあります。

変性が進んで陥入爪や巻き爪になったり分厚くなることで、痛みが出たり歩きにくい状態になってしまいます。

恐ろしいことに日本の疫学的な調査では5人に1人は水虫で、10人に1人は爪白癬があるという報告もあります。

水虫と爪白癬は年齢が上がるに従い頻度が増えて、特に爪白癬は、アメリカでは60歳以上の4割がかかっているというデータもあります。

だからこそ、うつらないための自衛策や家族にうつさないための防衛策をしっかり覚えておきましょう!

白癬菌が皮膚内に侵入し感染が成立するまでに最低24時間、キズがある場合は12時間くらいで感染すると言われています。

ですから知らない間に白癬菌に接触していても、健康な皮膚なら24時間以内にきれいに洗えれば感染を防ぐことができます

でも、ゴシゴシ洗いをしていると皮膚に小さいキズができ、かえって感染する危険性が高まります。手も足も顔と同じく、スキンケアの基本である泡立てて優しく洗うことをお勧めします(*^-^*)

銭湯やサウナなどの不特定多数の人が使用している足ふきマットなどには、ほぼ100%白癬菌がいますので、マット使用後には必ず足の水気をふき取り十分に乾燥させてから

靴下・靴を履くようにしましょう。時間の余裕がない時には、自宅に帰ってから足だけゆっくり洗うと良いでしょう^^

同様に不特定多数の人が使用したスリッパなどの履物にも注意しましょうね~

水虫の方が家にいる場合は、もちろん治療をしていることが前提ですが、家族との足ふきマットや履物の共用を避けて、できれば専用のスリッパなどを使用して白癬菌を床や畳にばらまかないようにしつつ、専用の履物や靴をこまめに洗ったり干したりすることで水虫の方自身に再感染をしないように工夫することも必要です。

いろいろ工夫していたのにうつってしまった場合は、あきらめて治療を始めましょう!

水虫治療の基本は塗り薬になります。

一方で、以前は爪白癬にたいして塗り薬は効果がほとんどなく、抗真菌剤の内服が必要でした。

この内服薬、効果は優れているのに他の薬剤との飲み合わせの問題や重篤な副作用を起こす可能性があり、また飲み方もスケジュールが決まっていてメンドクサイものでした。

ところがここ数年で爪の厚い角質にも効果がある塗り薬が登場して、とても治療がしやすくなりました!(^^)!

通常の水虫は、ちゃんと塗り薬を使えば数週間で改善してきますが、自覚症状が改善していても角質内の白癬菌は完全には消失していないことが多く、また家族や自身がバラまいた白癬菌の再感染もありますので、しっかり治るまで治療を継続しなければなりません。

爪白癬は内服でも外用でも薬の効果があれば徐々に爪がきれいになってきます。

各人の爪の伸びる速さでも変わってきますが、1年がかりと水虫より治療期間はかなり長くなってしまうことがほとんどです。

だからこそ爪白癬にならないように、しっかり水虫を治すことが大事になります。

水虫も爪白癬も、見ただけでは紛らわしい別の疾患のこともあり、外見だけでは医師でさえ判別できないこともあります。

そして先ほどは水虫だから必ず痒いわけではないことを力説しましたが、反対に痒いから水虫だとも言えません。自己判断で市販の水虫の薬を使っても痒みが治らない場合は、水虫以外の皮膚の病気の可能性があります。

水虫または爪白癬の診断は、顕微鏡で白癬菌の存在が確認できれば確定します。

病院での検査は簡単です。

怪しい部分の皮膚や爪の一部を削り取り、特殊な薬液で溶かして顕微鏡で白癬菌がいるかどうかを見つけるだけ・・・・なんですが、確実に白癬菌を採取できるかどうかは、検査するヒトの経験と技術(能力?)に左右されるところがあり、検査で白癬菌が見つからなかったから水虫または爪白癬ではないと言い切れません。

もし気になるのであれば、別の病院に相談して検査してもらうのも一つの考え方です。

最後に怖い話を。

水虫で皮膚がぼろぼろだと細菌感染をおこし、場合によっては死にいたることさえあります。

「人食いバクテリア」とも呼ばれる劇症型溶血性連鎖球菌感染症による壊死性筋膜炎や多臓器不全が原因です。

特にコントロールの悪い糖尿病の方や免疫機能の低下している状態の方は要注意です。

たかが水虫、されど水虫。

気になった方はちゃんとした皮膚科(皮膚科を標ぼうしているだけではなく皮膚科専門医が診ている病院のこと)や当院でご相談ください!

ワタクシは皮膚科専門医ではありませんが、最近水虫・爪白癬の患者さんが多く、白癬菌の採取と検出にはかなりの自信がありますのでお任せください(≧▽≦)


本日の復習!!


他人にうつさない、あるいは他人からうつされないようにするには、手足または靴・靴下などを良く洗って

しっかり乾燥させるようにしましょう

はやと形成外科クリニック

はやと形成外科クリニックは、異常な皮膚の状態を正常に近づけ、傷をキレイに治す形成外科のクリニックです。 鹿児島県内でも数少ない形成外科のひとつとして、地域のみなさまに高度で多様、幅広い医療をご提供しております。 今回、開院2周年を記念して、さらに地域のみなさまに愛されるクリニックを目指し、この度ブログを始めることとなりました。気軽にお訪ねください!

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